かませ犬のマッちゃん物語


1368.笑話=困った友人Mちゃん/その1 返信 引用

名前:のなか悟空 日付:10月6日(金) 17時4分
 Mちゃんとの馴れ初めは古い---。
オイラがまだ30歳前の頃、よく川口のオートレース場でガードマンのバイトをしていたのだが、その時に知り合ったのがM。いつも文庫本を片手に活字中毒の彼は、その筋肉質の体型に似合わず(自称、元武道の指導者)、雑学に秀でていた。

 その彼にはよくライブの手伝いをしてもらっていた。ドラムを運ぶ肉体労働である。ところが困ったことがひとつある。
ガザツなのだ---。
『Mちゃん足元気をつけてよ。ギターなんか倒しちゃあダメだよ。それにそこいらの機材を踏んじゃあダメだよ!』
『はいよーっ!』
返事はいい。だがその直後、『ガッシャーン!』
ギターを倒し、そこいらの電気機材を踏んでしまうのだった。
あららら・・・・。こっちから頼んだことだけに、文句も言えない。ギタリストはガックリうな垂れている。

『Mちゃん、もういいや。じゃ終わったらドラムを運んでくれるだけでいいよ』
『はいよーっ!』返事はいい。
ところがエレベーター前にドラムのケースがどっさり積んであるのに、スネアーケース1個だけ持って乗り込み、閉じるボタンを押そうとしているMちゃんを発見。
『Mちゃん、それ1個だけ?エレベータにはもっと入るぜよ。』どーせだったらもっとエレベーターに入れて運んでくれれば助かるんだけど』
『あっ、そーかぁ・・・』

このままではうだつが上がらないし、逆に気を使う。
『Mちゃんもういいや。何もしなくていいから駐禁にならないように車見てて』
『はいよーっ!』
とは答えるものの、Mちゃん、免許の類は全く持って無い。

 さて、オイラが車のそばまでドラムのケースを運び終えると、
『積み込みだろ?』
と言って積極的に手伝ってくれる−−−のはいい。
『ガーン!』
景気よくドラムのケースを車の中に放り投げるのである。

『おいおい、いくら叩く楽器だって、放り投げちゃダメだよ!』
『はいよーっ!』
そう返事してはまた、『ガーン!』と放り投げるのである。
『Mちゃん、もういい、いい。なにもしなくてもいいから助手席に座っててくれよ』
『はいよーっ!』
返事と気風はいいMちゃんなのであった。

それでも・・・人間の相性というものは不思議なものだ。そのMちゃんと付き合うようになって早、30年にもなる。


1369.笑話=かませ犬のMちゃん/その2 返信 引用

名前:のなか悟空 日付:10月6日(金) 17時4分

 大宮から片道2時間以上かけて、都内のライブハウスに30年来の友人であるMちゃんと向かう。
助手席のMちゃんに飲み物を奢るのは習慣になっている。とはいえ、吝嗇なオイラは120円の缶コーヒーをチビチビと2時間以上かけて飲む。かたやMちゃんはコーラかなにかの炭酸飲料を、受け取るやいなや『グビグビグビ-プハーッ!!』と、一気に飲み干す。それは見ている側も気持ちはいい。
『Mちゃんよぅ、奢ってやったんだからどうでもいいけどさ。片道2時間はあるんだぜ。一気飲みしたら後が無くなっちゃうぜ』
『あっ、そーか!』
と、こんな感じ。

 Mちゃんの話は内容が悲観的なこと。
以前、睡眠薬を飲みすぎて体温が38度まで下がったこともあるというから、見かけによらぬ悲観度はハンパじゃない。
 だから話題も最終的には墓場へ向かう。
俺『こんどさぁ、○×さんは教授になったんだったんだってよ』
M『だけど競争が激しいんだろ?足元すくわれなきゃあいいけどねぇ』
俺『こんど○×君の本が売れたんだってよ』
M『でも一度は誰だって売れるだろうけどさ。その後がね。だんだん消えていくんだよ』

 ここでオイラが切れる−−−。
『Mちゃん、オマエはそれだからダメなんだよ。どうして話題を悪い方へ悪い方へ悲観的に考えるんだよ。調子よくガンガンいきゃあいいじゃないか!』
というわけで、Mちゃんをこっぴどく罵る。そこでオイラは意気軒昂し、ドラムを叩くライブハウスへは、ハイな気分で乗り込むことになる。

 そこでオイラいわく、
俺『Mちゃんオマエは俺の噛ませ犬だぜ。おかげで天下を取った積もりでドラムを叩けるぜ』
M『そうそう、オレはどーせ噛ませ犬が似合ってるんだょ』

 と、我々の墓穴を掘ったり、り噛まれたりする、野次喜多ライブ道中は断片的に続いているのである。


1370.笑話=消えちゃったMちゃん/その3 返信 引用

名前:のなか悟空/福沢諭 日付:10月7日(土) 20時22分

いつだったかオイラのバイトで、ピアノを2階へ運ぶ仕事の時だった。250キロもの重さを手で運び上げるものだから、いつもの2人では大変だ。それで予備役としてMちゃんを連れて行くことにした。
 1階の家からピアノをようやく搬出し、2階建ての家に着いた。そこで下見し段取りを整えて、『さぁ、運ぼうか!』という段になって、Mちゃんの姿が見えない。そういえば養生などの段取りに忙殺され、すっかり彼のことを忘れいたのだった。
『あれ?Mちゃんどこへ行ったの?』
『知らないよ』
相方に尋ねても当然知るわけはない。
『しょーがない。2人でやろか』

そういうわけで、我々はアリさんのように頑張って、2人でピアノを2階まで階段を運び上げてしまったのだ。
『ふぅー・・・』
流れる汗をぬぐうその場所にMちゃんが現れた。
『おお、悪りぃわりぃ』
『Mちゃん、いったいどーしたんだよ。どこ行ってたんだい?』
『いやぁ、ここいらは景色がよくてさぁ。ついつい散歩してたんだょ』
ギャフン!

Mちゃんにはバイトとして、我々のために大事な時間を裂いてくれた。その意に感謝し、バイト代は約束のカネを払った。ただし、次回からはいくら景色が良かったとしても、仕事の途中で消えてしまわないようにクギをさした。


1371.笑話=リサーチするMちゃん/その4 返信 引用

名前:のなか悟空 日付:10月7日(土) 20時36分

 Mちゃんはライブに同行すると、来ている客にリサーチする癖がある。
『キミは、《のなか悟空&人間国宝》って知ってるの?』
『フーン、いつごろから?何で知ったの?』
などと聞き、それをわざわざオイラに報告してくる。ま。それ位のことは構わない。

 だが、困ったこともある−−−。
相手が女性の場合である。
『へぇーっ、そいで住んでるのは独りで?』
『で?どこ?』
『そいで?アパートなの?マンション?』
『彼氏はいるの?』
もとより、Mちゃんにはナンパなどといった下心は全く無い。純粋な彼はフツーのオジサンとして、若い女の子に対して抱く単純な疑問を、相手に素直に投げかけているだけなのである。ここいらの会話が聞こえてくると、オイラはMちゃんに会話中止命令をだす。
『おいおい、Mちゃん、そこまで!そのへんでヤメときなょ』
そして質問攻めにされている女性に侘びを入れる。
『すみません。別に他意はないおじさんなんだけど、素直なだけなんですよ』

 かくして・・・元々女性客の少ない我々のバンドは、さらに客が減っていったのであった。


1372.笑話=『離したよー』と、手を離しちまったMちゃん/その5 返信 引用

名前:のなか悟空 日付:10月8日(日) 7時5分

■離したよー
 埼玉の自宅の近く。
ピアノをタダでもいいから引き取って欲しいという依頼が来た。そこでさっそくMちゃんを呼んで手伝ってもらうことにした。自称元武術指導者、Mちゃんは力が強い。そこでさっそく助っ人を頼んだ。

 2人でアリさんのようにエンヤコラ、エンヤコラと250キロもあるピアノを軽トラックに積み込む。だがここで困ったことがある。Mちゃんは
『離すよーっ』と言って手を離すのではなく、
『離したよーっ』といった時は、すでに重いものを持っている手を離した後なのである。
 で−−−、『ガッシャーン!』
ピアノは大きな音を立てて、地面に落っこちてしまったのである。
『・・・』
こちらも格安で助っ人を依頼しただけに文句は言えない。

「なぁ、Mちゃんよぅ、たとえトイレだって風呂だって他人が入ってる時に、「開けたよ~」じゃダメだろう。事前に打診するのが普通だ。力仕事の時は「離すよ~」って合図するのが普通で、「離したよー」じゃ、絶対に危ないぜよ」
「あっ、そーかぁ」
と、どこまでも無邪気なのである。

 かくして−−−、必死に運んだピアノは急激な衝撃のため、以降の調律不能。調律の出来ないピアノは楽器じゃない。オイラは産廃業社までピアノを運んで、1万何千円かの料金を払って、ピアノを廃棄したのであった・・・。
 


1376.笑話=バイトはガードマンだけのMちゃん/その6 返信 引用

名前:のなか悟空 日付:10月11日(水) 12時28分

 Mちゃんは50歳を幾つか過ぎた、オイラの古くからの友人だ。だがちょっと困ったところがあった−−−。
 以前はオイラも含めて川口オートや大宮競輪でガードマンのバイトをやった。Mちゃんのこのところのバイトは、デパートなどの常駐勤務が多い。
 常駐とは−−−朝夕の従業員やパートタイマーの出入り、出入り業者のチェック等々があると思うのだが、その殆どが後ろ手を組み、書類や許可証に目を通し、うなづいているだけが主となる。

 さて、そんなガードマンだけの仕事しか経験の無いMちゃんとピアノを運んだらどうなるのか−−−?
 こっちがふぅふぅいって養生(ピアノや家屋をキズ付かないよう保護すること)したり、運搬道具を運んでいても、腕組みをするか後ろ手を組んでコッチを見てこう言う。
『ピアノ運送もタイヘンだねぇ〜』
『おいおいMちゃんよぅ、それはいいけど立って見てるだけだったら、手の1本も貸してくれねぇかい』
と頼むのが常だ。
『だってなにやっていいかワカンナイもん』
『だったらオレが運んでいるものがあって、1度に運びきれないものがあったら、残りを持って付いて来るとかさ。気を利かせば何でもあるでよ』
『あっ、そっかぁ』
といつもこうだ。
 ま、それでも慣れないことをしてもらっても、ケつまづいて転んだり、ピアノや建物を傷つけられても困る。たいていは多くを要求しないことにしている。

 ある日こんなことがあった−−−。
軽トラックにピアノを積み終えた。さて、ロープを掛けようか、という段になった。こっちからロープを投げれば、向こうに引っ掛けて投げ返す。これがロープがけだ。
 ところが−−−向こうに側に立っているMちゃんにロープを投げたが帰ってこない。
『おい、ロープはどーした?』
『ロープ?こっちに飛んできたよ』
『じゃあそれをフックに引っ掛けて、投げ返してくれよ』
『あっ、そーなんだ。ナルホド』
『おいおい』
まるで漫才だ。

 で、ロープはたまたまMチャンのところで長さが終わった。
『じゃあさ、Mちゃんロープをフックに掛けて結んだくれよ。そしたらとっとと帰るぜ』
そう言って運転席に乗り込み、Mちゃんが助手席に来るのを待っていた。が−−−ナカナカ来ない。
『おい、Mちゃん、どーした?』
『のなかちゃんよぅ、おれロープ結べないんだよぅ』
な、なに?
まさか、もやい結びや、複雑な結び方を要求しているわけではない。ロープが解けないように、フックに結ぶだけなのだ。
『Mちゃん、こんなことも出来ないのかよぅ』
『だってガードマンにゃあ必要ないモン』
『ま、まあな』
Mちゃんって・・・まるで満州皇帝の溥儀か?溥儀は自分の靴の紐も結べず、雑巾の絞り方も知らなかったというが、これってまるでMちゃん状態。いやいや、Mちゃんこそ、皇帝なのでR。


1377.笑話=パトカーで自宅へ返送のMちゃん/その7 返信 引用

名前:のなか悟空 日付:10月12日(木) 14時30分

 去年の夏のことだった−−−。
Mちゃんに電話したら息子が出た。
『Mちゃんどーしてる?』
『温泉に行きました。』
どうやら、Mちゃんの稼ぎも安定し、一段落したのでワイフと温泉にでも・・・とその時は思った。

 それから何日かして、Mちゃんと話をする機会があった。
『Mちゃんよぅ、稼ぎが安定したんだねぇ。温泉に行ったんだって?どこの温泉?』
『熱海さぁ』
『奥さんと一緒だろ?』
オイラは夫婦で温泉へ行くJRのフルムーンのCMをイメージして言った。
『違うよ。一人でさ』
『じゃあ何で行ったの?』
『自転車』
『ゲッ!熱海まで自転車でかい?』
なんせ、ここは埼玉県の大宮市。静岡県の熱海と言えば聞いただけで気が遠くなるほど遠い。

『それがさぁ、いろいろとタイヘンだったんだよぅ。』
『どういうふうに?』
実は当時、夏なので日中は暑い。それで深夜に自転車(もちろんMちゃんはママチャリ専用)で熱海に向かったんだと。大宮を過ぎ、与野も浦和も過ぎて、川口を通過すれば東京都に入る。そこで荒川の橋を渡っていると、橋の袂にある交番で呼び止められたらしい。

『おれさ、免許何も持ってないだろ?それで身分証明の代わりに保険証を見せたんだよ。それでも信用してもらえなくてね。自転車ドロボーのに間違えられちゃったんだよ。』
『そいで?』
『信用してもらうため、パトカーに自転車を載せて、大宮の自宅まで送り届けてもらったのよ。そこで自宅に帰って家族が出てきたら信用されてね。でも夜中に警察に連れられて帰宅したもんだから、家族が驚いちゃってたよ。』
『ま、そりゃそーだわな。そいでまた送ってもらったのかい?』
『いや、頭来てもう一緒に乗りたくは無いわな。そこでまた東京を目指して自転車を漕いだのさ』
『す、スゴイ!』
それにしてもMちゃんのママチャリ・パワーも、ものすごいバイタリティーである。
http://homepage2.nifty.com/nonakagoku/goku/



1378.笑話=Mちゃんよ、アンタのケータイ何のため?/その8 返信 引用

名前:のなか悟空 日付:10月13日(金) 10時49分

 今年の春のこと、我が家の引越し祝いのバーベキュー・パーテーをやろうということになった−−−。集まったのはどいつも一癖も二癖もある割には、どこかネジの1−2本足りない、おバカなお友達たち。当然ここでもMちゃんは主賓級の大主役であった。

 パーテーは夕方の6時くらいからを予定した。のんびりと焼肉を食べながら、ちびちびやろうかという趣向だった。主だったバカ友たちも集まり、ビール片手にそこそこ会話に花が咲いていた。焼肉の炭もゴンゴンと唸って、網に肉さえ置けば、即食べられそうな状況になっていた。

 が−−−、主役のMちゃんが来ない。あのハングリーで食欲旺盛で、アルコールには目が無いMちゃんが、よもや忘れるはずが無い。
『のなかちゃんよう、ケータイに電話入れてみたら?』
『だって時間はちゃんと伝えてんだからさ。遅れるんだったら向こうから連絡があるでしょうよ。ケータイ持ってんだから。』
『それもそうだ』
ということになり、焼肉に箸を付けることにした。

 それからMちゃんがいつ来てもいいように、焼肉はゆっくりとしたペースで食べていた。ところが30分経ち、1時間が経ってもMちゃんからは何の連絡も無い。その頃になるとメンバーたちの腹も膨れてきてしまったし、まだ春だということで外にいても肌寒い。そうこうしているうちにみんな腹もたまってしまったので、全員家の中に入った。

 時間は予定の夕方の6時をはるかに過ぎて、夜の8時も過ぎてしまった。
『ところでMちゃんってここの場所知ってんの?免許だって持ってないんでしょ?』
『Mちゃんはここ知らないよ。でも地図を見て来るって言ってたから、いつものようにママチャリで来るんじゃない?だって熱海にまでママチャリで行く男だぜ。それに場所が分かんなきゃあケータイで電話してくるだろうしさ』
『それにしても遅いね。事故か何かあったんじゃないの?やっぱケータイに電話してみる?』
というわけで、ケータイに電話するのはイヤだが、Mちゃんに電話を掛けた。

『はい、もしもーし!』
意に反し、受話器からはMちゃんの元気な声が返って来た。
『おい、Mちゃんよぅ、どーしたの?みんな待ちくだびれて焼肉食っちまったよ。』
『あっ、悪りぃ、ワリィ、今向かってっからさ。』
『で?どこにいるんだよ』
『今、駅からそっちに向かって歩いてんだよ。後30分もかからないんじゃない?車で迎えに?いいよいいよ、歩いていくから。』
それを集まっていた友人たちに告げると、
『アホクサ、ずーっと待ってんのによ、まだ30分も待ってろってか。悪いけどもう遅いから帰るわ』
と、帰り支度を始めた。

 やっとこさMちゃんが我が家に着いた時にはもう夜の9時近く。友人たちの家も遠い。明日もみんな仕事がある。それぞれ明日が控えているのだ。
『よっ、悪りぃワリィ!』
『Mちゃんよぅ、6時くらいからバーベキューやる予定だって言ったじゃん。バーベキューは冷めたら美味くないぜ。それに炭だってガスと違うから、いつまでも真っ赤には燃えてない。何時ごろに○×駅に着くから迎えに来てくれだとか、自転車で行くから何時ごろになるだとかヒトコト連絡をくれればさ、みんなで一緒に食べられたのによぅ。』
Mちゃん用に焼く肉は残してはいたものの、それはもうすっかり冷めてしまっていた。

『Mちゃんよぅ、ケータイってこんな時のために持ってるんじゃないのかい?』
『あっ、そーかぁ!』
友人暦25年、憎めないMちゃんなのであった。

《友は自分を映す鏡》だという。その諺にどれだけの信憑性があるのかどうかは分からないが、《当たらずとも遠からず=中(あた)らずと雖(いえど)も遠からず 》なのかも知れない。


1389.笑話=Mちゃんよぅ表札の名前変えたの何でやねん?/その9 返信 引用

名前:のなか悟空 日付:10月19日(木) 12時16分

 この前のことだ。たたまMちゃんの家の近くを、通りかかったので寄ってみた−−−−。
 マンションの4階。エレベーターに乗り4階のボタンを押した。エレベーターのドア出てすぐのところに玄関がある。ピンポーンと数度押したが返答が無い。ドアを叩いてMちゃんを呼んでも応答なし。Mちゃんの家までわざわざまた来るとなれば、バイクでも小一時間はかかる。オイラは未練タラタラで、何気なく表札を見た。

(おや・・?)
そこにはMちゃんの氏名ではなく、高校生になる長男の氏名が書かれていた。
(こりゃタイヘンだ。Mちゃん死んじまったんじゃあ・・・)
というのも、もしMちゃんが死んだとしても、奥さんはオイラの住所も電話番号も知らない。オイラに連絡が無いまま葬儀を済ませてしまったのか・・・。

(まてよ・・・?)
Mちゃんが死んだとしても、表札は奥さんの名前になるか、Mの苗字だけになるはず。わざわざ長男の氏名を書いた表札を出しているということは・・・もしかして夫婦心中でもしちまったのか?こりゃタイヘンだ!
 最悪の事態を考えて、帰宅すると何度もMちやんの自宅やケータイへ電話を入れた(ケータイを持ち歩いてないのと、電話番号メモを持っていないため)。それでも誰も出ない。
(こりゃマジにヤバイかも・・・?それともケータイの電源が入っているということは、まだ生きているのか?)

 心配をしていると、夜になってMちゃんから電話があった。
『よぅ、のなかちゃん、何か用かい?』
『おぉ!Mちゃん、あぁよかった。生きてたのか!』
『なんで?』
『だってオメェ、表札を変えるなんてーのは、よくよくのことじゃなきゃあ変えねぇよ。オレはてっきりオマエさんが、自殺でもして死んだのかと思ったぜ!なんで表札を書き換えたんだよ』
『別に理由なんかねぇよ。たまたま気が向いたからさ』
『おいおい、大丈夫かい?そんなことはあんまりしないぜ。普通は世帯主が死んじゃったら書き換えるくらいだろ?』
『あっ、そうあかい。』
『・・・・』

ま、いずれにせよ何事も無くて良かった、良かった。なんせ27年来のごく近しい友人である。そうそう死なれちゃあ困るのだ。


1449.笑話=Mちゃんよぅケータイ持ってんのなんのため?/その10 返信 引用

名前:のなか悟空 日付:11月27日(月) 18時38分

 Mちゃんがまたまたやってくれた−−−。
前回のライブの時のことだ。久々にオイラのライブにMちゃんが来たいと言う。それではと、道中の長い横浜へ一緒に行くことにした。Mちゃんと一緒ならあれこれ喋りまくり、長い道中も退屈が紛れる。
『Mちゃんさぁ、じゃあ家の最寄の駅に3時半だぜ。遅れたら先に行っちゃうよ。』
『はいよーっ!』
『じゃあさ、念のため大宮駅から電車に乗り込む前に電話をくれよ。そうすれば最寄の駅に到着する時間を計算して、駅前で待ってるからさ。』
『いいともぅ〜!』
オイラはMちゃんの軽快な安請負に、一抹の不安を感じたが、ま、久々だし遅れる事も無かろうと思った。

 翌日−−−。
予定の3時半になったが、Mちゃんからは何の音沙汰もない。
(まさか?乗り込む前に電話をくれる約束を、忘れてるんじゃあるまいか?)
確認のためにMちゃんのケータイに電話を入れた。
『はいよーっ!』
『Mちゃん、今どこの駅?』
『まだ家だよぅ。』
『えっ?家?』
『そっ、これからトイレ。それから出るよ。』
『トイレって大?』
『そっ』
『じゃあ速く頼むぜ。ライブ遅れっちまうよぅ』
『はいよーっ!』

(やっぱり・・・Mちゃんスカしてくれたかぁ・・・。)
Mちゃんが慌ててトイレを済ませたとしても、Mちゃんの家から大宮駅までは徒歩で15分はかかる。それから上手く乗換えの電車が来たとしても乗換えて25分。最短でも40分は遅れる計算になる。

 オイラは待ち合わせ予定の駅前に速めに行って待機した。が、そこであることに気がついた。
(そうか・・・オイラが待ち合わせの駅を幾つか大宮寄りにすれば、時間はだいぶ短縮出来る。)
そう思って、待ち合わせの駅から2駅分、大宮に近づいてMちゃんを待つ事にした。そしてそこでMちゃんのケータイに電話を入れた。

 ところが−−−『おかけになった電話は電源が入ってないか云々・・・』。
(アッチャー!)
律儀にもMちゃんは、電車の中でケータイの電源を切っていた。
(こりゃタイヘンだ!)
オイラはまたまた最初の待ち合わせ場所へ車を走らせたのだった。

 『よっ、ワリィワリィ』
Mちゃんはいつものセリフを言いながら片手を挙げて来た。彼との付き合いもかれこれ25年以上は経つ。腹は立つが、まったく憎めないMちゃんである。これを腐れ縁というのだろう。


笑話=Mちゃんよぅ、なんでメガネかけないの?/その11

 30年来のMちゃんはひどい近視だ。
読書にしろ、駅の切符買いにしろ、待ち合わせにしろ、殆ど見えていない。視力を訪ねたら0.3だの0.4だのというレベル。
 そのくせ車の助手席に乗っている時には外を歩いている女性の老若は区別がっくらしく、二言目には「おっ、ネェちゃん!」と声をだす。だからどうしたという訳ではないが、次の句は皆無で、それだけでオシマイ。何をどーしたいのかはMちゃんの腹の中を覗いて見るしかない。

 ある時Mちゃんに言ったことがある。
「そんなに目が悪いんだったらメガネ掛ければいいじゃないかよぅ」
するとMちゃん、
「メガネ持ってるよ」
「じゃなんで掛けないの??」
「世の中にゃさあ、『見たくないもの』が多いんだよぅ。だからメガネは掛けないのさ」

 うう・・・ん、奥が深い。
そういえばオイラも加齢で目が悪くなってきたが、世の中には「見たくないもの」、「聞きたくないもの」、「言ってもしょうがないもの」、が方が多くなってきている。そういう意味でMちゃんの言葉は極めて重く心に残っている。


遅刻するときだけケータイで連絡が来るK
贅沢な悩みのN